最近の研究でわかった、筋肉が出す「マイオカイン」とは?

この記事の著者
【氏名】杉本愛季(管理栄養士、公認スポーツ栄養士)
【経歴】
2012年〜2016年 スポーツ会社 管理栄養士として勤務
2016年〜2021年 大学助手(栄養学科)として勤務
2021年〜2024年 病院管理栄養士として勤務
2024年~ フリーランスとして活動
【資格・免許】
2014年 5月 管理栄養士免許 取得
2016年 5月 健康運動指導士資格 取得
2021年 10月 公認スポーツ栄養士資格 取得
毎日ウォーキングしているのに、体重が思うように落ちない。
ジムに通い始めたのに、なんか変わっている気がしない…。
頑張っているのになかなか結果が出ないこと、ありませんか?
効果を出すためには摂取カロリーと消費カロリーはもちろん大事ですが、
実は近年の研究で、筋肉を動かすことで体の中に分泌される
“マイオカイン”という物質も、運動効果に深く関わっていることがわかってきました。
今回は、知っておくと得する意外な救世主、“マイオカイン”についてお話をしていきます!
目次
筋肉を動かすと分泌される“マイオカイン”とは?
筋肉といえば鍛えると強くなる、太くなるというイメージが強いですよね。
でも最近の研究で、筋肉にはもうひとつ面白いはたらきがあることがわかってきたんです。
2003年、デンマークの研究者が驚きの発見をしました。
―筋肉は動くたびに、血液中にある特別な物質を分泌している—
それが“マイオカイン”という物質です。
マイオカインとはギリシャ語で「筋(myo)」と「作動物質(kine)」を組み合わせた言葉。
筋肉が収縮するときに分泌され、血液に乗って全身へと届けられる生理活性物質のことです。
この発見以降、研究が急速に進み、現在では300種類以上のマイオカインが確認されています。

マイオカインの体内の働き
マイオカインの種類はたくさんありますが、運動との関係で特に研究が進んでいる効果を3つに分けてご紹介します。
1. 脂肪へのはたらきかけ
マイオカインの一種”イリシン”は、血液に乗って脂肪細胞まで届きます。
そして“ため込む脂肪(白色脂肪細胞)”を”燃やす脂肪(褐色脂肪細胞)”に近い性質へと
変える可能性があることが研究で示されています。
脂肪の性質そのものを変えることで、太りにくい体の環境をつくることに関与すると考えられています。

2. 血管の健康を守るはたらき
“イリシン”や”アペリン”というマイオカインは、
血管の内壁を保護する一酸化窒素(NO)の産生を促し、動脈硬化のリスク抑制に関与すると考えられています。
実際に肥満のある成人を対象にしたヒト研究では、有酸素運動によってイリシンが増加し、血管の柔軟性が高まる可能性が示されています。

3. 運動強度とマイオカインの関係
運動の強度によって、マイオカインの分泌量も変わってきます。
軽い運動でもマイオカインは分泌されますが、運動強度が高いほど分泌量が増えるという報告が多くあります。
“できる範囲でよいので、少しずつ強度を上げていく”
こともマイオカインを増やすコツです。
また、マイオカインは運動をやめると分泌がすぐに落ちてしまう性質があります。
だから“週末にまとめてがっつりやる”より
“毎日少しこまめに動かす”ほうが、
体への信号が途切れにくく、継続的な効果が期待できます。
さらに、継続して運動を行うことで、同じ運動量でも
マイオカインの分泌量が増加するという研究データもあります。
“運動の継続”がマイオカインをしっかり分泌させるためのポイントとなります。

マイオカインを効率よく引き出す運動のコツ
では実際に、どんな運動をするとマイオカインがより多く出るのでしょうか?
マイオカインは、“筋肉が収縮するとき”に分泌されます。
より多く引き出すには体の中でも特に大きな筋肉を使う動きが効果的です。
おすすめは、太もも・お尻・背中など、体の大きな筋肉をまとめて動かす運動です。
下半身には体の筋肉の約60〜70%が集まっているため、
脚を使う運動はマイオカインの分泌量を高めるうえで特に効率的です。
マイオカインを引き出すおすすめ筋トレ3つ
スクワット(太もも・お尻)
足を肩幅に開いて立ち、ゆっくり椅子に座るようにひざを曲げて腰を落とす。
背筋はまっすぐ、ひざがつま先より前に出ないように意識するのがポイント。
ランジ(太もも・お尻)
足をそろえて立ち、片足を一歩前に踏み出して、
そのまま上体をまっすぐ保ちながら腰を落とす。
前に出したひざが90度になるくらいが目安。左右交互に行いましょう。
腕立て伏せ(胸・背中)
両手を肩幅より少し広めについてうつ伏せになり、
体を一直線に保ちながらひじを曲げて胸を床に近づける。
きつい場合はひざをついてOK。
週2〜3回、10回からでOKです。
自分のできる範囲から始めてみてください。

まとめ
マイオカインの力を借りるためにも、
“大きな筋肉をちゃんと動かせているかな?”
と振り返りながらぜひ筋肉を動かしてみてください。
全部やろうとしなくて大丈夫です。
自分が”これなら続けられそう”と思えるものをひとつ選んで、
まずは2週間試してみてください。
その小さな習慣が、3ヶ月後の体の変化につながっていきますよ。
【参考】
※1 Pedersen BK, et al. Muscle as an endocrine organ: focus on muscle-derived interleukin-6. Physiol Rev. 2003.
※2 眞鍋康子|マイオカインは運動模倣薬となるか? 薬学雑誌 vol.138 No.10(2018)
※3 理学療法ジャーナル「マイオカインによる代謝への影響」51巻6号(2017)
※4 InBody「マイオカインとは」
https://inbody.co.jp/myocaine/