「夜食べると太る」は本当?タイミングを味方につける”時間栄養学”

この記事の著者
【氏名】杉本愛季(管理栄養士、公認スポーツ栄養士)
【経歴】
2012年〜2016年 スポーツ会社 管理栄養士として勤務
2016年〜2021年 大学助手(栄養学科)として勤務
2021年〜2024年 病院管理栄養士として勤務
2024年~ フリーランスとして活動
【資格・免許】
2014年 5月 管理栄養士免許 取得
2016年 5月 健康運動指導士資格 取得
2021年 10月 公認スポーツ栄養士資格 取得
「同じものを食べているのに、夜食べると太る気がする…」
そう感じたことはありませんか?
実はこれ、気のせいでも思い込みでもなく、ちゃんと理由があることなんです。
今回は、いつ食べるかが体重に大きく影響する
“時間栄養学”
について、お話していきます。
食べるものを変えなくても、タイミングを意識するだけで
翌日の体の軽さも変わるかもしれません。
ぜひ最後まで読んでみてください!
目次
私たちの体には「ためこみスイッチ」がある
私たちの体には、約24時間の周期で動く「体内時計」が備わっています。
この体内時計が、脂肪のためこみやすさにも関わっているのをご存じでしょうか。
正確には24時間より少しだけ長くて、毎朝光を浴びたり朝ごはんを食べたりすることで、24時間にリセットされています。
体内時計には、脳にある「主時計」と、
内臓や筋肉にある「末梢(まっしょう)時計」の2つがあります。
主時計は朝日を浴びることでリセットされ、
末梢時計は朝ごはんを食べることでリセットされます。
つまり、起きてカーテンを開けて光を浴び、そのあと朝ごはんを食べる、
この一連の流れこそが、体内時計を整える上ではとっても効率的なんです。
そしてこの体内時計のリズムを大きく動かしているのが、
”BMAL1(ビーマルワン)”というタンパク質です。
BMAL1は、いわば体の”ためこみスイッチ”のような存在。

1日中ずっと同じ強さで働いているわけではなく、
時間帯によって大きく変動するのが特徴です。
働きが弱くなるのは、昼から夕方にかけて。
特に15時前後が一番おだやかな時間帯になります。
逆に働きが一番強いのは、22時から深夜2時ごろ。
その差はピーク時で、15時の約20倍ともいわれています。

そしてもう一つ。
朝から昼にかけては”インスリン”というホルモンが働きやすい時間帯です。
インスリンは血糖値を下げてくれる役割を持っているのですが、
これがしっかり働く時間に食べると、血糖値の上昇もゆるやかになり、
脂肪に変わりにくくなります。
逆に夜は同じ食事をしても血糖値が上がりやすく、ためこまれやすい状態になります。

夜のほうが脂肪に変わりやすいというのは、
”BMAL1とインスリン”
この2つの作用が大きく関わっているんです。
「食べる時間」を整える3つのポイント
ここからは、体内時計を味方につけた食事のポイントを3つ、ご紹介します。
① 朝ごはんは起きてから2時間以内に
朝ごはんには、体内時計に”1日のスタート”を伝えるスイッチの役割があります。
これを抜いてしまうと体内のリズムが乱れやすく、
夜の食欲が増しやすくなることもわかっています。
「朝は食欲がない…」という方も、まずはひと口からでOK。
ヨーグルト1個、ゆで卵1個、バナナ1本、豆乳コップ1杯など、
軽めのものでも、体にとっては立派なスイッチになります。

さらに、よく噛んでゆっくり食べることもおすすめです。
よく噛む動作は、一定のリズムを持つ“リズム運動”の一種で、
”セロトニン”という脳内ホルモンの分泌を促してくれます。
セロトニンは別名”幸せホルモン”とも呼ばれていて、
朝の脳をスッキリ目覚めさせて、心も穏やかにしてくれる存在です。
朝ごはんをしっかり噛むことで、体だけでなく心のスイッチもONにすることができます。
② ガッツリ食べたいものはランチに
「今日はパスタ大盛りで!」「ガッツリ揚げ物食べたい!」
そんな日の“ガッツリ”は夜ではなくランチに持ってくるのがおすすめです。
昼は一番栄養を効率よく使ってくれる時間帯。
BMAL1の働きも弱くなっているので、同じ量を食べても夜ほど脂肪に変わりにくいです。
お昼に楽しんで、夜は控えめに。
これだけで、ストレスも軽減されて、夜のドカ食いなども予防することができます。
ただし、これを毎日やってしまうと意味がないので、あくまで”たまにの楽しみ”にとっておいて下さいね。

③ 夕食は「寝る3時間前まで」を目安に
夕食の時間を少し早めるだけでも、体への負担は変わってきます。
寝る直前に食べると、寝ているあいだも胃腸が働き続けてしまい、
睡眠の質も下がりやすくなってしまうんです。
「仕事の都合でどうしても遅くなる」という方は、
夕食を2回に分けてみるのも一つの方法です。
たとえば17〜18時ごろに、おにぎり1個やサンドイッチ、チーズ+ナッツなどを軽くつまんでおき、帰宅後はお味噌汁+お惣菜など軽めに済ませるイメージ。
こうすると、帰宅後のドカ食いを防げて、血糖値の急上昇もゆるやかにできます。
「夜ごはんを我慢する」ではなく、「重いものは前倒しで、2回に分けて食べる」と考えると、楽に続けやすくなります。

まとめ
まずは、できることから1つだけでも、ぜひ意識してみてください。
食べる内容、だけじゃなく”食べる時間”を味方につけて、理想の体を目指していきましょう!
【参考】
・厚生労働省 e-ヘルスネット「体内時計」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-039.html
・農研機構 食品研究部門「時間栄養学(Chrono-nutrition)」
https://www.naro.go.jp/laboratory/nfri/introduction/chart/0203/chrononutrition.html
・柴田重信『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門
ー体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』講談社(2023)
・有田秀穂『脳からストレスを消す技術』サンマーク出版(2008)
・Morris CJ, et al. “Endogenous circadian system and circadian misalignment
impact glucose tolerance via separate mechanisms in humans.”
PNAS, 2015;112(17):E2225-E2234.
・Stenvers DJ, et al. “Circadian clocks and insulin resistance.”
Nature Reviews Endocrinology, 2019;15(2):75-89.