この記事の著者

【氏名】杉本愛季(管理栄養士、公認スポーツ栄養士)

【経歴】
2012年〜2016年 スポーツ会社 管理栄養士として勤務
2016年〜2021年 大学助手(栄養学科)として勤務
2021年〜2024年 病院管理栄養士として勤務
2024年~ フリーランスとして活動

【資格・免許】
2014年 5月 管理栄養士免許 取得
2016年 5月 健康運動指導士資格 取得
2021年 10月 公認スポーツ栄養士資格 取得

3月。少しずつ暖かくなり始め、春が近づいてきて嬉しい反面、
「またあの時期がやってきた……」と少し憂鬱になっている方も多いのではないでしょうか。

そう、「花粉症」です。

花粉症対策にはいろいろなアプローチがありますが、実は最近、「腸内環境」を見直すことが近道として注目されています。

腸内環境を整えることが免疫のバランスを整えることにつながる、というのはご存知の方も多いかもしれません。

私たちの体の免疫細胞の約70%は腸に集中しているからです。

腸内環境を整えるには「乳酸菌」を摂る、というのが一般的ですが、実は乳酸菌に加えて「酪酸菌(らくさんきん)」が重要な鍵を握っています。

今回は、この「酪酸菌」について、じっくりお話ししていきますね。

「乳酸菌」と「酪酸菌」は腸内でどう働いてる?

私たちの腸は、入口の「小腸」から出口の「大腸」まで続く長い道です。

この道を性質の異なる菌たちがリレーのように連携して守ってくれています。

①乳酸菌:入口を整える「環境づくり担当」

まずはおなじみの乳酸菌。主に「小腸」で活躍します。

大きな仕事は腸内を「酸性」に保つことです。

アレルギーを悪化させる原因にもなる悪玉菌は、酸性の環境がとても苦手。

乳酸菌が環境を整えてくれることで腸内の防衛レベルが上がります。

②酪酸菌:腸内を鎮める「ブレーキ担当」

続いての酪酸菌。彼らはさらに奥の「大腸」を主な住処にしています。

 酪酸菌は、大腸に届いたエサを食べて「酪酸(らくさん)」という物質を作ります。

ここが花粉症対策のポイントなのですが、この「酪酸」こそが、免疫の過剰なパニックを鎮める「司令塔」を育てる貴重なエネルギー源になるのです。

2つの菌が連携することで腸内環境が安定

ここで面白いのが、この2つの菌の連携です。

乳酸菌が入口をきれいに整えて、酪酸菌がブレーキ役の司令塔を育てる。

この連携がスムーズにいくことで、体全体の免疫システムが整い、花粉に対しても「過剰に攻撃しなくて大丈夫だよ」という正常な判断ができるようになっていくのです。

酪酸菌を味方につける!上手な摂り方と増やし方

ステップ1:まずは乳酸菌で環境を整える

酪酸菌が元気に働くためには、まず乳酸菌で腸内の環境を整えてあげる必要があります。

以下の食品を、毎日少しでも取り入れてみましょう。

(おすすめ食材)

ヨーグルト、納豆、キムチ、味噌、甘酒

ステップ2:酪酸菌の特徴を知って増やす

・酪酸菌が直接摂れる食品はほとんどない

次に摂りたいのは酪酸菌ですが、実は酪酸菌は「嫌気性(けんきせい)」という性質を持っており、「酸素が好きじゃない」んです。

なので、空気に触れられる形で作られる食品にはほとんど含まれていません。

その中で、酪酸菌が唯一多い食品が、酸素の少ない深い床の中で守られながら作られる「ぬか漬け」です。

直接酪酸菌を摂りたい場合は、ぬか漬けを毎日の食事にちょっとだけ取り入れるのがおすすめです。(食べすぎると塩分の摂りすぎにつながるので、あくまで小皿に少し添える程度にしてくださいね!)

・外から摂るより「お腹で育てる」のが近道!

酸素に弱い酪酸菌は、食べ物から生きて腸まで届けるのはなかなか大変です。

そこで最も効率的なのが、「すでに腸内にいる酪酸菌にエサを届けて育てる」こと。

彼らの大好物は、大腸まで消化されずに届く「水溶性食物繊維」です。

(おすすめ食品)

  • もち麦(白米に混ぜるだけで手軽に摂取できます)
  • わかめ、めかぶ(味噌汁やサラダに加えるだけ)
  • オクラ、なめこ(ネバネバ成分が腸内細菌のエサになります)

ステップ3:セットで食べると効率アップ

乳酸菌と酪酸菌のエサをセットにすると、腸内での連携がさらにスムーズになります。

(おすすめコンビ)

  • ヨーグルト×バナナ(乳酸菌+オリゴ糖)
  • 納豆×めかぶ(水溶性食物繊維)
  • もち麦ごはん×ぬか漬け(水溶性食物繊維+酪酸菌)

知っておきたい「酪酸菌」の注意点

(1) 水溶性食物繊維の「摂りすぎ」に注意

急に増やすと、お腹の張りやガスの原因になることがあります。

少しずつ取り入れましょう。

(2) 「危険な酪酸菌」もいる!?

酪酸を作る菌の中には、歯周病に関わるものもあります。

口腔内で増えた菌は唾液と一緒に飲み込まれ、腸内環境に影響を与える可能性も指摘されています。

せっかく腸内で良い菌を育てても、口の中の環境が乱れているとバランスが崩れてしまうこともあります。

そのため

  • 寝る前の歯磨きを丁寧に行う
  • 歯間ブラシやフロスを使う
  • 舌の汚れ(舌苔)を軽く除去する

といった基本的な口腔ケアも、実は腸内環境を守る大切な習慣です。

「腸活=食事」だけでなく、口から腸までを一つの流れとして整えることがポイントになります。

まとめ

「乳酸菌で環境を整え、酪酸菌にエサをあげてブレーキをかける」

花粉症対策として、自分の体の中の菌を味方につけることは、体質ケアの大きな一歩になります。

まずは無理なく、できることから取り入れてみてください。