この記事の著者

【氏名】青山愛果(管理栄養士)

【経歴】
2013年~2022年 病院管理栄養士として勤務
2024年 管理栄養士としてフリーランスとして活動

【資格・免許】
2011年3月 栄養士免許 取得
2013年5月 管理栄養士免許 取得

ご高齢の方が少し転んだだけで骨折してしまったという話を聞いたことはありませんか?

骨折は寝たきりの原因にもなるため、健康寿命を延ばすためには、丈夫な骨づくりが大切です。

今回は、骨粗鬆症を防ぐための栄養について紹介します。

骨粗鬆症について

骨の中がスカスカになり、骨折しやすくなった状態が、骨粗鬆症です。

「骨密度」と呼ばれる、骨のミネラル分の詰まり具合が、骨粗鬆症の指標となります。

骨密度は、40代半ばから減り始め、高齢期の女性は骨粗鬆症のリスクが高まります。

骨密度が1番高い時期は20歳前後で、この時期の骨量を「最大骨量」と呼びます。

生涯の骨の丈夫さは、最大骨量によって決まるため、20歳頃までに骨密度を最大限高めておくことが、骨粗鬆症予防に繋がります。

また、骨は、古くなった組織を壊し、新しい骨を作ることを繰り返しています。

骨粗鬆症では、古い骨を壊すことよりも、新しい骨を作る働きが弱くなります。

40代半ばから骨密度の減り幅を少なくするためには、新しい骨づくりを支える栄養が欠かせません。

骨粗鬆症の原因は、カルシウムやビタミンDなどの栄養不足や、加齢、閉経などです。

女性ホルモンのエストロゲンは、骨を作ることを促し、古い骨を壊す働きを抑えてくれます。

閉経後は、エストロゲンの分泌量が低下することから、50代以降の女性に骨粗鬆症が増えるのです。

加齢や閉経は防ぐことが難しいため、食事などの生活習慣で骨粗鬆症を予防しましょう。

骨粗鬆症を予防するための栄養

はじめに、痩せている方や食が細い方は、十分なエネルギー量を確保することから始めましょう。

十分なエネルギーが摂れていないと、骨や筋肉を作るためのたんぱく質がエネルギー源として消費されてしまいます。

十分な食事量をとれるようになってきた段階で、骨を丈夫にするための栄養を補えると良いでしょう。

骨を丈夫にするために必要な栄養素は下記の4つです。

  1. たんぱく質
  2. カルシウム
  3. ビタミンD
  4. ビタミンK

たんぱく質は骨の主成分であり、丈夫な骨づくりにおいて欠かせない栄養素です。

たんぱく質の詳しい情報は、下記の記事を参照ください。

今回は、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKの働きと、それらが豊富に含まれる食品について紹介します。

カルシウム

たんぱく質とともに骨の主成分であるカルシウムは、骨粗鬆症予防において欠かせない栄養素。

カルシウムは、食品によって吸収率が異なり、乳製品が40%と最も高く、小魚が33%、野菜は10%です。

そのため、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品を毎日1つは取り入れることで、効率良くカルシウムを補給できます。

乳製品の脂肪分が気になる方は、低脂肪タイプを選ぶと良いでしょう。

骨ごと食べられる小さいイワシやアジ、シシャモなどの小魚は、カルシウムとともにたんぱく質も補給できる一石二鳥の食材です。

手軽に取り入れたい方は、イワシの缶詰がおすすめ。

日持ちするのでストックすることができて、味付けされたものを選べばすぐに食べられます。

野菜や大豆などの植物性食品は、カルシウムの吸収率が低いものの、積み重ねることで十分な量のカルシウムを確保することにつながります。

カルシウム量が特に多い食品は、大豆製品ならがんもどき、野菜ならモロヘイヤです。

これらとともに、他の植物性食品も併せて取り入れてみてください。

ビタミンD

ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、健康な骨づくりをサポートする栄養素です。

日光に当たることで肌でも産生されるビタミンDは、紫外線対策をしている方や、屋内で過ごすことが多い方は不足しがち。

また、ビタミンDは、魚やきのこなどの限られた食品にしか含まれていないため、意識的に取り入れることが大切です。

魚の中でも、ビタミンDの含有量が特に豊富な鮭は、毎週取り入れたいおすすめの食品です。

紅鮭の切り身1切れ(80g)には26.4μgのビタミンDが含まれており、切り身半分で1日の摂取目安量(9μg)を十分補うことができるほど。

また、カルシウム補給のおすすめとして紹介したイワシの缶詰は、ビタミンDも豊富に含みます。

イワシの味付け缶50gには、ビタミンDが10μg含まれており、こちらも1日の摂取目安量を補える量です。

ビタミンK

ビタミンKは、カルシウムが骨に定着するよう働きかけ、新しい骨づくりをサポートする栄養素です。

ビタミンKは、納豆、クロレラ、青汁、ブロッコリー、ほうれんそうに多く含まれています。

納豆は、たんぱく質も補える上に、調理不要で手軽に食べられる便利な食品です。

野菜をたくさん取り入れることが難しい方は、手軽な青汁を試してみるのも良いですね。

※内服している薬によって、ビタミンKの制限が必要な場合もあります。かかりつけ医や薬剤師にご確認ください。

まとめ

骨粗鬆症対策は、思い立ったが吉日!

早ければ早いほど、将来の骨の健康を守ることにつながります。

骨粗鬆症予防におすすめのメニューは、鮭とブロッコリーのクリームシチューです。

たんぱく質、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを1品で補えるので、ぜひお試しください。

参考資料

厚生労働省 健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~ 骨密度
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/exercise/ys-027

日本人の食事摂取基準2025年版 脂溶性ビタミン 多量ミネラル
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316466.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316468.pdf

日本食品標準成分表2020年版(八訂)