この記事の著者

【氏名】青山愛果(管理栄養士)
【経歴】
2013年~2022年 病院管理栄養士として勤務
2024年 管理栄養士としてフリーランスとして活動
【資格・免許】
2011年3月 栄養士免許 取得
2013年5月 管理栄養士免許 取得
暑くなってくると熱中症や脱水が心配になりますよね。
塩飴やスポーツドリンクを取り入れている方もいるのではないでしょうか?
実は、脱水になる前と後では水分補給の方法が異なります。
今回は、効果的な水分補給のコツについて紹介します。
心臓病や腎臓病などの病気をお持ちの方は、かかりつけの医師に水分補給の方法をご相談ください。
脱水予防のための塩について
暑い環境ではたくさん汗が出て、体の水分が失われます。
その際、水分と一緒に塩分も失われるため、近年人気を集めているものが、塩を含んだ経口補水液や飴です。
しかし、塩は生活習慣病が気になる方には摂りすぎたくない栄養素でもあります。
普段どおり食事をとれていて、汗を大量にかいたり暑い環境で長時間過ごしたりすることが無ければ、水やお茶を飲むだけで十分です。
日本人の食塩摂取量は1日平均9.8gであり、目標量(男性7.5g、女性6.5g)を大きく上回っています。
普通に味付けされた食事を召しあがっている方は、「暑くて汗をかくからいつもより塩分を補わなければ」と塩入りの飴や飲料を取り入れる必要はありません。
しかし、下記のような脱水リスクが高いシーンでは水分と塩分を併せて補うことを検討しましょう。
- 食事がほとんどとれず、水分も塩分も不足している
- 暑い場所で長時間過ごしている
- 大量の汗をかいている

また、めまいや立ちくらみ、生あくびなどの熱中症の症状が出始めた時には、経口補水液での水分補給が脱水の改善に効果的です。
経口補水液は、水分と塩分を速やかに吸収できる配合で作られた飲料です。
国の制度で認められた「感染性胃腸炎による下痢・嘔吐に伴う脱水状態の際に、水と電解質の補給のために利用できる食品」として、特別用途食品のマークがついています。
脱水になる前は水分を補給し、脱水や熱中症の症状が出始めた時は水分と一緒に塩分も補いましょう。
水分補給のコツ
脱水や熱中症は予防が肝心です。
日常の水分補給では、一度に大量に飲むのではなく、少しずつ飲むようにしましょう。
こまめに少しずつ水分を補うことで、1日を通して体に水分が満たされた状態を保てます。
「熱中症環境保健マニュアル2022」において、1日に飲む水の量はコップ6杯(1.2リットル)を目安としています。

汗を多くかいた時は、これよりも多くの水分を補うことが必要です。
その日のうちに水を十分飲むことができなかった場合は、次の日までに十分な水分を補いましょう。
また、水分が不足すると血液の流れが悪くなり、脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクも高まります。
水分補給は夏だけでなく、1年を通して心がけたいものです。
季節を問わず取り組みたい水分補給のコツは下記の4つです。
- 喉が渇く前にこまめに水分をとる
- いつもよりコップ2杯分多く水を飲む
- ジュースやコーヒーは水分補給には含めない
- お酒を飲んだら水も飲む
それぞれの詳しい内容を紹介します。
1.喉が渇く前にこまめに水分をとる

皆さんはどんな時に水やお茶を飲みますか?
喉が渇いてから水分を摂る方は要注意です。喉の渇きは脱水が始まっている合図。
脱水予防のためには、喉が渇いていなくてもこまめに水分をとることが大切です。
特にご高齢の方は喉の渇きや暑さを感じにくいため、水を飲む機会を増やしましょう。
2.いつもよりコップ2杯分多く水を飲む

「1日に飲む水の量を計るのは難しい」という方は、いつもよりプラス2杯の水を補うことを意識しましょう。
寝ている間や入浴中は、汗をかいて体の水分が失われるため、朝起きた時と入浴前後のタイミングでコップ1杯ずつ水を飲むことをおすすめします。
3.ジュースやコーヒーは水分補給には含めない

夏は冷たいジュースやアイスコーヒーを飲みたくなる季節。
コーヒーにはカフェイン、ジュースには糖類が多く含まれており、水のようにたくさん飲むことは控えたいものです。
日本では健康な成人のカフェイン摂取目安量は設けられていませんが、カナダ保健省ではカフェインを1日最大400mgまでにするよう注意喚起しています。
これは、カフェインの過剰摂取によってめまい、心拍数の増加、不眠、下痢や吐き気などのリスクが高まるためです。
また、糖類の摂りすぎは血糖値や中性脂肪の上昇につながり、肥満の原因にもなります。
コーヒーやジュースは嗜好品としてとらえ、水分補給には水を取り入れましょう。
4.お酒を飲んだら水も飲む

暑い時期に喉が渇くとビールを飲みたくなる方も多いのではないでしょうか?
喉の渇きをお酒で潤そうとして、水やお茶を飲まないと脱水のリスクが高まります。
お酒を飲んだ後にトイレが近くなった経験はありますか?
アルコールは体の水分を尿として外に出す働きがあります。
そのため、お酒を飲む際は、水も併せて取り入れるようにしましょう。
まとめ
脱水だけでなく、熱中症、脳梗塞、心筋梗塞などの病気を防ぐためには、水分補給が大切です。
喉が渇く前に少しずつこまめに水を飲むようにしましょう。
コーヒーやジュース、お酒は飲み過ぎ注意です。
参考資料
厚生労働省 熱中症予防のための情報・資料サイト
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/
消費者庁 経口補水液について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/oral_rehydration_solution
環境省 熱中症環境保健マニュアル2022 熱中症を防ぐためには
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_3-1.pdf
熱中症診療ガイドライン2024
https://www.mhlw.go.jp/content/001314082.pdf
国土交通省 「健康のため水を飲もう」推進運動
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply/stf_seisakunitsuite_bunya_topics_bukyoku_kenkou_suido_nomou_index.html
特定非営利活動法人 日本高血圧学会 高血圧の人の熱中症予防について
https://www.jpnsh.jp/general_salt_01.html
令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
日本人の食事摂取基準2025年版 多量ミネラル
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316468.pdf
厚生労働省 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html