この記事の著者

【氏名】青山愛果(管理栄養士)

【経歴】
2013年~2022年 病院管理栄養士として勤務
2024年 管理栄養士としてフリーランスとして活動

【資格・免許】
2011年3月 栄養士免許 取得
2013年5月 管理栄養士免許 取得

最近は「腸活」という言葉を聞く機会が増え、腸に良いとされる食品が注目されています。

便秘や下痢などお腹の調子が良くないと悩む方は特に気になりますよね。

今回は腸内環境を整える食事のポイントについて紹介します。

腸の状態が脳にも影響する?腸の働きについて

腸は小腸と大腸に分けられ、小腸は食べたものの栄養を吸収し、大腸は便を作る働きがあります。

腸の機能はそれだけではありません。

最近は腸の持つ免疫機能に注目が集まっています。

人の体にある半数以上の免疫細胞は腸に存在し、免疫器官として重要な役割を果たしているのです。

腸は口から入ってきた有害な細菌やウイルスと接する臓器であり、これらを排除することで感染症から身を守っています。

腸の機能は他にもあります。

強いストレスを感じた時にお腹が痛くなったり、旅行中に便秘になった経験はありませんか?

これは、脳で感じたストレスが腸に影響することが原因です。

また、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」は、腸で吸収されたトリプトファンからつくられます。

セロトニンは神経伝達物質のドパミン、ノルアドレナリンなどを調整し、精神を安定させる働きがあります。

腸は精神状態にも関わっているのです。

このように腸と脳が互いに影響し合う関係を「腸脳相関」と呼びます。

腸を整えることは、免疫や脳との関係など体のいたるところに良い影響を与えるのです。

腸内環境を整える「シンバイオティクス」を取り入れよう

腸内には細菌が種類ごとにまとまって生息しており、それを「腸内フローラ」と呼びます。

お腹の調子を整える「善玉菌」、便秘や下痢の原因になる「悪玉菌」、善玉菌と悪玉菌の割合によって有益にも有害にもなる「日和見菌」のバランスがとれていることで、腸の健康は保たれるのです。

その比率は善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7が理想とされています。

善玉菌よりも悪玉菌が増えると、日和見菌は悪玉菌の味方となってしまい腸内環境が乱れてしまいます。

腸内フローラのバランスを保つためにも、悪玉菌より善玉菌が多い状態を保たなければなりません。

腸の善玉菌を増やすためには、菌そのものだけでなく菌のエサになる食品を一緒に摂ることが大切です。

乳酸菌や納豆菌などの腸に良い影響を与える「腸の善玉菌」を「プロバイオティクス」と呼びます。

ヨーグルトや納豆、味噌、ぬか漬け、キムチなどが代表的な食品です。

善玉菌のエサとなる食品を「プレバイオティクス」と呼び、オリゴ糖や食物繊維がこれにあたります。

プロバイオティクスとプレバイオティクスを併せて「シンバイオティクス」と呼び、それぞれを単独で摂るよりも効果的に腸内環境を改善することが期待されます。

毎日コツコツ取り入れることで、腸内フローラのバランスが整うことに繋がるのです。

シンバイオティクスとなるメニューの例を5つ挙げます。

  • バナナヨーグルト
  • 野菜たっぷり味噌汁
  • 納豆とめかぶの和え物
  • ブロッコリーのキムチ和え
  • ぬか漬け入りポテトサラダ

プレバイオティクスの中でも、食物繊維を積極的に取り入れることがおすすめです。

食物繊維は腸内細菌の発酵を受け、セロトニンの産生を促す働きがあります。

腸で産生されたセロトニンは、腸の働きを活発にすることで便秘の改善が期待できるのです。

塩気の多いキムチやぬか漬けは調味料代わりに使うことで、食塩の摂りすぎを抑えられます。

身近な食品を組み合わせて簡単に取り入れられるので、ぜひお試しください。

腸内環境を乱す食事とは?

食べたものによって便の状態が変わったと感じることはありませんか?

私たちが食べたものによって腸内環境は変化し、便の状態に反映されるのです。

シンバイオティクスを取り入れると同時に、普段の食生活が乱れていないか見直しましょう。

食生活の乱れは腸内環境の乱れにも繋がります。

特に肉類や脂質の多い食事は腸内フローラのバランスを崩す一因です。

たんぱく質は筋肉をつくる上で欠かせない栄養素ですが、たんぱく質に偏った食事は悪玉菌を増やす原因になります。

肉類だけでなく、主食や野菜も取り入れ、食事全体のバランスを整えることが大切です。

また、油っこい料理を多く召し上がる方は、網焼き・グリル・煮る・茹でる調理法の料理を選ぶ機会を増やしましょう。

毎日の食生活に気を付けることで、腸内環境は改善に向かっていきますよ。

まとめ

腸内環境を整えるには、腸の善玉菌そのものに加え、オリゴ糖や食物繊維などの善玉菌のエサを一緒に取り入れる「シンバイオティクス」が効果的です。

普段の食生活が肉類中心になっている方は、主食(ご飯・麺・パン)や副菜(野菜のおかず)も忘れずに取り入れましょう。

また、油の摂りすぎは腸内環境を乱す一因です。

メニュー選びの際は、こってりしたものよりもあっさりしたものにしてみることをおすすめします。

参考資料

便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症
https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00812.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b

便通異常症診療ガイドライン2023 慢性下痢症
https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00811.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b

福土 審.腸脳相関とストレス.ストレス科学研究. 2013, 28, 16-19
https://www.jstage.jst.go.jp/article/stresskagakukenkyu/28/0/28_16/_pdf

腸内細菌 山城 雄一郎 順天堂大学
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jmj/60/1/60_25/_article/-char/ja

公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット 腸内細菌叢(腸内フローラ)とは
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenko-cho/chonai-saikin.html