この記事の著者

【氏名】青山愛果(管理栄養士)
【経歴】
2013年~2022年 病院管理栄養士として勤務
2024年 管理栄養士としてフリーランスとして活動
【資格・免許】
2011年3月 栄養士免許 取得
2013年5月 管理栄養士免許 取得
前回のコラムでは、減塩を行った上で取り入れたい栄養素として「カリウム」と「n-3系脂肪酸」を紹介しました。
今回は、高血圧の予防や改善に役立つ栄養素として「食物繊維」と「マグネシウム」を紹介します。

高血圧の改善が期待できる栄養素について
最近は「血圧が高めの方に」と記載された飲料やサプリメントを見かけることが増えました。
高血圧の食事療法は「味が薄くておいしくない」「もっと手軽に高血圧対策をしたい」と感じることもあるかもしれません。
そんな方にとっては手軽な飲料やサプリメントは心強い存在ですよね。
しかし、「これさえ飲んでおけば食事を気にしなくても大丈夫!」ということはありません。
高血圧対策において食事を整えることは必要不可欠です。
減塩に取り組むことはもちろんですが、不足しやすい栄養素を補うことも大切です。
お手本とするのは、高血圧の予防・改善となる「DASH食」と呼ばれる食事パターン。
これは、野菜・果物・低脂肪乳製品・魚を豊富に取り入れた食事のことです。

DASH食の特徴的な栄養素である「食物繊維」と「マグネシウム」について紹介します。
1. 食物繊維
食物繊維は、便秘や悪玉コレステロール値・血糖値を改善することが知られています。
実は高血圧改善のサポートをしてくれる栄養素でもあるのです。
DASH食は野菜と果物を豊富に取り入れており、食物繊維の摂取量が多いことが特長です。
高血圧患者に食物繊維摂取量を1日5g増やすと血圧が低下したという研究結果もあります。
食物繊維は意識的に摂り入れなければ、不足しやすい栄養素です。
普段の食事1食にプラス1~2gの食物繊維を補えると良いでしょう。

食物繊維の「ちょい足し」におすすめの食品を紹介します。
<手軽に食物繊維を補給できる食品と食物繊維含有量>
| 食品 | 量 | 食物繊維含有量 |
|---|---|---|
| 納豆 | 小1パック(30g) | 2.0g |
| めかぶ | 1パック(40g) | 1.4g |
| きなこ | 大さじ1(8g) | 1.4g |
| ミニトマト | 5個(100g) | 1.4g |
| キウイフルーツ | 1/2個(50g) | 1.3g |
| 木綿豆腐 | 1/3丁(100g) | 1.1g |
| あおさ | 味噌汁1杯分の具 (3g) | 0.9g |
| いりごま | 大さじ1 (7g) | 0.9g |
| 板のり | 1/3枚 (1g) | 0.4g |
栄養素の補給は少しずつの積み重ねで、ちりも積もれば山となります。
ヨーグルトにきなこを入れたり、ご飯にいりごまを混ぜるなどの手軽な方法もありますよ。
納豆、めかぶ、豆腐、ミニトマトは包丁やまな板を使わずにプラスできる食品です。
ぜひ普段の食卓に取り入れてみてください。
2.マグネシウム
マグネシウムはミネラルの一種で、歯や骨を作ることや、酵素の働きやエネルギー産生を助ける栄養素です。
不足すると、脱力感、眠気、食欲不振、嘔吐などの症状が出ることがあります。
実は高血圧の予防や改善に役立つことをご存じでしょうか?
血圧コントロール不良の高血圧患者にマグネシウムを1日240mg以上補給することで、血圧低下を認めたという研究結果があります。
日本人の食事摂取基準2025年版では、1日のマグネシウム推奨量は下記の量が提示されています。
<男性の場合>
18~29歳:340mg 30~49歳:380mg 50~64歳:370mg 65~74歳:350mg 75歳以上:330mg
<女性の場合>
18~29歳:280mg 30~64歳:290mg 65~74歳:280mg 75歳以上:270mg

令和4年の国民健康・栄養調査の結果、20歳以上のマグネシウム平均摂取量は250mgでした。
高血圧の改善を目指す場合は、食品から積極的にマグネシウムを取り入れることが望ましいと考えます。
マグネシウムを多く含む食材を知り、普段の食生活に取り入れることをおすすめします。
<マグネシウムを豊富に含む食品とマグネシウム含有量>
| 食品 | 量 | マグネシウム含有量 |
|---|---|---|
| がんもどき | 大きめ1個(100g) | 98mg |
| あおさ | 味噌汁1杯分の具(3g) | 96mg |
| ほたてがい | 大きめ1個(160g) | 94mg |
| ほうれんそう | 1/2袋(100g) | 69mg |
| 木綿豆腐 | 1/3丁(100g) | 57mg |
| 発芽玄米 炊飯後 | 茶碗2/3杯(100g) | 53mg |
| カシューナッツ | 13粒(20g) | 48mg |
| 納豆 | 1パック(40g) | 40mg |
あおさは常備して手軽に味噌汁に加えられる便利な食材で、少量加えるだけでマグネシウムを補給できます。
ほうれんそうはカリウムも豊富に含まれており、高血圧対策にぴったりの食品です。
がんもどきはカルシウム補給にもなる食材で、トースターで焼くだけで手軽に食べられますよ。
まとめ
血圧が高めの方は、「食物繊維」と「マグネシウム」を補うことをおすすめします。
手軽に取り入れられるものや、1つの食品で複数の栄養素が摂れるものもあります。
減塩に取り組んだ上で、ぜひ取り入れてみてくださいね。
参考資料
日本人の食事摂取基準2025年版
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316475.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316468.pdf
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
令和4年 国民健康・栄養調査結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001296359.pdf
糖尿病ネットワーク マグネシウムは不足しがち 血圧を改善し体内時計の調整にも役立つ
https://dm-net.co.jp/calendar/2016/025779.php
