この記事の著者

【氏名】伊藤たえ(脳神経外科医)

【経歴】
2004年3月 浜松医科大学医学部卒業
2004年4月 浜松医科大学付属病院初期研修
2006年4月 浜松医科大学脳神経外科入局
2013年7月 河北総合病院 脳神経外科 勤務
2016年9月 山田記念病院 脳神経外科 勤務
2019年4月 菅原脳神経外科クリニック 勤務
2019年10月 医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科
菅原クリニック東京脳ドック 院長

【専門】
日本脳神経外科専門医  日本脳卒中学会専門医

【資格・免許】
医師免許

新年度が始まって1か月。新しい職場や環境にそろそろ慣れてきた頃でしょうか。でも、なんだか、やる気が出ない、体がだるいなど感じていませんか?

もしかすると五月病かもしれません。ほうっておくと、うつ病に進行してしまう可能性もあるので、正しい知識を身に着け、対策していきましょう。

今回は、五月病についてお話していきます。

五月病とは

五月病とは、新年度が始まる4月から1ヶ月ほど経った5月頃に、精神的に調子が悪くなってしまった状態の俗称です。

正式な医学用語ではありませんが、この季節に学生や新入社員に起こりやすいため、五月病と呼ばれています。

新生活から1ヶ月ほど経過し、生活に慣れ始めた頃に、緊張が解けて疲れが出たり、期待と現実のギャップに悩んだりすることが多いです。

ゴールデンウィークに生活リズムが乱れることも影響すると言われています。

意欲がわかない、マイナス思考になってしまう、よく眠れないなどメンタル面での不調だけでなく、体のだるさや、頭痛、疲れやすさ、食欲が出ないなどの身体の不良として現れることもあります。

五月病は一種の適応障害とも考えられますが、ほうっておくと、本格的なうつ病に進んでしまうこともあるので、注意が必要です。

五月病になりやすい人

几帳面、責任感が強い、完璧主義、他人に気を遣い衝突を避ける方は、五月病になりやすいと言われています。

学生や新入社員は、社会人経験が浅く柔軟に対応することに慣れていないので、五月病になりやすい傾向があります。

五月病のサインとは?

五月病という言葉は、主にメンタル面の不調に対して使われがちな言葉ですが、身体の症状としても、さまざまな不調が生じます。

また、心身の不調は仕事へ影響を及ぼし、仕事がうまくいかなくなることで、余計にストレスが溜まってしまうという悪循環を引き起こします。

五月病に早く気づき、適切な対処をすることが大切なので、五月病のサインを見逃さないことが大切となります。

身体的な症状、精神的な症状、仕事への影響に分けて説明していきます。

身体的な症状

不眠

  • 夜なかなか寝付けない。
  • 途中で起きてしまったり、朝早く目が覚めてしまう。
  • 熟睡感がない。

下痢や便秘

  • 下痢になってしまう。
  • 便秘でお腹が張ってくる。
  • 下痢と便秘を繰り返す。

胃痛や胃の不快感

  • 胃がキリキリする。
  • 食べすぎたり飲みすぎたりしたわけではないのに、胃もたれがする。
  • 気持ち悪さが続く。
  • 食欲がわかない。

風邪のような症状や頭痛

  • 微熱が出て、体がだるい。
  • 頭がもやもやする。
  • 頭が重たい感じがする。

精神的な症状

  • 何もやる気が出ない。
  • 休みの日は何もせずに過ごしてしまう。
  • 食事や入浴が億劫になる。
  • 掃除や片付けをしなくなる。

不安になる

  • 不安感が消えない。
  • 漠然とした不安な気持ちがつきまとう。
  • どうしていいか分からなくなる。

イライラする

  • 些細なことで、気が立ってしまう。
  • 常に頭がもやもやしてすっきりしない。

趣味が楽しめなくなる

  • 今まで興味があったことにも無関心になってしまう。
  • 趣味から遠ざかってしまう。
  • 外出したくなくなる。

仕事への影響

仕事や学校に行くのが苦痛になる

  • 出勤、通学がとても苦痛に感じてしまう。
  • 通勤、通学途中で気持ちが落ち込む。

仕事でミスが増えたり、勉強の効率が落ちる

  • 今までは問題なくできていたことでも、ミスをしてしまう。
  • 聞いたことをすぐ忘れてしまう。
  • 考えがまとまらない。

五月病対策

信頼できる人に相談する

先輩や上司の中には、過去に五月病にかかったことがある人もいるでしょう。そのような人の場合、今のつらい気持ちをよく理解してくれます。

自分自身が経験していなくても、同僚や後輩などから、過去に相談を受けているかもしれませんので、適切なアドバイスや協力を得られることもあります。

学生さんの場合は、友達に相談するもの良いですが、まだ学校に親しい友達がいない場合もあると思います。

その場合は、スクールカウンセラーに相談するのもいいでしょう。

また、自分の気持ちを話すことそのものが、ストレスを外に逃がして緩和する作用もあります。

生活習慣を整える

気分が落ち込むと、部屋にこもりがちになりますが、太陽の光は健康なメンタルに不可欠です。

朝太陽の光を浴びるようにし、就寝前はスマホやパソコンなどの刺激の強い光はさけるようにしましょう。

規則正しい食生活も大切です。体を動かすことや入浴もリフレッシュに繋がります。

仕事の分担と自分の時間

仕事や勉学とプライベートの時間のバランスを取ることが大切です。無理のない範囲で、効果的なスケジュールの作成を心掛けましょう。

仕事や勉学に集中する時間と、自分自身のリフレッシュの時間を明確に区別し、無理なく調整していきましょう。

プライベートの時間でストレスを発散する方法を見つけることも必要です。

小さな目標の設定と達成感

メンタルが不調のときは、高い目標を持つことは危険です。

目標を達成する気力がわかず、自分を責めたり、目標が達成できないことによって、更に落ち込んでしまうリスクがあります。

そんな時は目標のハードルを思いっきり下げるとよいでしょう。

小さなことでも達成感を増やすことで、自己肯定感の向上に繋がります。

仕事や学校に行けない、生活がつらいと感じたら

仕事や学校に行こうとすると体調が悪化したり、涙が出たり、職場や学校にいるのが辛くなってきた場合は、無理せず専門家に相談しましょう。

1人で抱え込んで、五月病が長引いてしまうと、うつ病などの精神疾患に繋がる可能性があります。

カウンセラーや産業医がいる場合は相談してみましょう。

難しい場合は、ためらわずに心療内科や精神科などの医療機関を受診しましょう。

五月病は無理せず、少しずつ乗り越えていきましょう

五月病は誰でもなる可能性があります。

ストレスはかならずあるものですから、ストレスと上手に付き合う方法を考えていきましょう。

几帳面で真面目な人ほど、五月病になりやすいと言われていますので、新しい仕事や環境では失敗はつきものと考え、気を楽に持つことも大切です。

調子が悪いと感じたら、無理をせず周りに相談し助けてもらいましょう。

五月病は、放置するとうつ病などの精神疾患に繋がる可能性があります。症状が長引く場合や、日常生活に支障をきたす場合は、早めに医療機関を受診しましょう。