この記事の著者

【氏名】伊藤たえ(脳神経外科医)

【経歴】
2004年3月 浜松医科大学医学部卒業
2004年4月 浜松医科大学付属病院初期研修
2006年4月 浜松医科大学脳神経外科入局
2013年7月 河北総合病院 脳神経外科 勤務
2016年9月 山田記念病院 脳神経外科 勤務
2019年4月 菅原脳神経外科クリニック 勤務
2019年10月 医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科
菅原クリニック東京脳ドック 院長

【専門】
日本脳神経外科専門医  日本脳卒中学会専門医

【資格・免許】
医師免許

みなさんは、スマホ首という言葉を聞いたことはないでしょうか?

名前の通り、スマートフォンの使用が引き起こすことがある首の症状で、医学的にはストレートネックといいます。

首の7つの骨はカーブしています

首の骨は、正確には頚椎(けいつい)と呼ばれ、7つの骨から構成されています。

この7つの骨は、前側に凸のカーブを呈しています。これは、正常な状態で、生理的湾曲といわれています。

脊椎は、上から、頚椎、腰椎、腰椎、仙椎とあり、首の頚椎以外にも、胸の部分は後ろに、腰の部分は前に曲がったS字状のカーブを築いています。

この生理的湾曲には、体重を分散し、バランスを保つ作用があります。また衝撃を吸収し、脳や内臓を保護する役割を担ったり、脊柱の可動性を高める作用があり、とても重要なものなのです。

今回は、この大事な生理的湾曲が、頚椎で消失してしまった状態であるストレートネック(スマホ首)について解説していきます。

ストレートネックとは

ストレートネックは、首の骨である頚椎の正常なカーブ(生理的湾曲)が失われた状態です。首がまっすぐな状態になるので、ストレートネックという名前がついています。

頚椎は前方に軽くカーブしているのが正常な状態で、そのカーブが体への負担を減らしています。

ストレートネックでは、このカーブが減少または消失します。さらに、後方が凸の逆カーブになることもあります。そうなると体への負担が増えてしまいます。

ストレートネックになる人はとても増えてきており、やはりスマートフォンやコンピュータを長時間使用する生活が影響していると言われてます。

ストレートネックの原因は

スマートフォンやコンピュータを使用するときは、どうしても前かがみの姿勢になりがちです。前傾姿勢は、頚椎の生理的なカーブと逆の方向に働きます。

不適切な姿勢を長時間継続することにもなり、首への負担が増えてしまいます。猫背の姿勢も、首が前に突き出るため、首への負担が大きくなりますので、気を付けましょう。

筋肉の緊張も、ストレートネックの原因となります。首や肩の筋肉が緊張すると、しなやかさが失われ、頚椎が正常なカーブを維持できなくなってしまうからです。

逆に筋肉が衰えても、ストレートネックにつながります。運動不足などで首や肩回りの筋肉が衰えると、首を支える力が弱くなり、頚椎の正常なカーブを維持できなくなってしまいます。

外傷もストレートネックの原因になることがあります。交通事故やスポーツによる外傷で首を傷めないように気をつけましょう。

寝具との相性も重要です。高すぎる枕や、柔らかすぎるマットレスは、首の自然なカーブを保てなくなり、ストレートネックを悪化させる原因となりかねません。

ストレートネックになることにより、頚椎のバランス異常が生じ、筋肉や靭帯にさらにストレスを掛けることになります。

肩こり、首こりにより、ストレートネックになり、それがさらに筋肉の緊張を増強し、肩凝り、首こりが悪化するという悪循環がおこります。

ストレートネックによる症状

ストレートネックの症状として、代表的なものに、肩こりと首こりがあげられます。

先ほどご説明したように、頚椎のバランスの乱れは、筋肉の緊張を引き起こし、さらに、その緊張がストレートネックにつながるという悪循環です。

そのため、筋肉の過度な緊張を生じさせないことと、筋肉の緊張が強くなり過ぎたときは、緊張を和らげることが重要になってきます。

その他にストレートネックの症状として、首や肩の痛みがあります。不自然な姿勢になっているため、血行が悪くなり、痛みに繋がります。

頚椎のカーブが乱れると、頭の重さを支える負担が大きくなります。首や肩の筋肉の負担が増加することで、筋肉が常に緊張した状態になり、疲労が蓄積されてしまいます。頚部のだるさにつながります。

頚部の疲労やだるさが蓄積されてくると、後頭部も痛くなり、頭痛を引き起こします。この頭痛は、緊張型頭痛と呼ばれます。以前の緊張型頭痛についてのコラムもご参照ください。

頚椎の骨の歪みが続くと、椎間孔という神経が出ているところが狭くなり、神経が圧迫され、痛みや痺れの原因となることがあります。

ストレートネックの診断と治療

ストレートネックの診断は、医師による問診や身体検査、必要に応じてX線やMRIなどの画像検査を通じて行われます。

レントゲンでは頚椎のカーブが失われているのがよく分かります。MRIによって、神経への圧迫がないか、他の病気がないかなどを確認することもあります。

ストレートネックの治療には、まずは姿勢の改善です。前傾姿勢や猫背になっている人は、正しい姿勢を意識する必要があります。正しい姿勢でないと頚椎のカーブを維持できません。

ストレッチ運動も重要です。ストレッチで、硬く緊張してしまっている首や肩の筋肉をほぐすようにしましょう。同時に、筋力強化運動も大切です。

痛みが強い場合は鎮痛剤が処方されますし、筋肉の緊張が取れにくい時は、筋弛緩剤が処方されることもあります。

理学療法士による治療やマッサージも効果的です。自分で軽くさすったり、家族や知り合いに筋肉を軽くほぐしてもらうのもよいでしょう。

ストレートネックの予防方法

ストレートネックの大きな原因は間違った姿勢です。

前傾姿勢になりがちなスマホの連続使用は控えましょう。デスクワーク中は正しい姿勢を意識しましょう。モニターの位置や椅子の高さを見直すのもいいでしょう。

長時間同じ姿勢を続けないように、こまめな休息も必要です。

首や肩周りの筋肉をほぐすストレッチを日頃から心がけましょう。

デスクワーク中は1時間おきに5分ストレッチをするなど決めておくのもいいでしょう。適度な運動も取り入れましょう。首や肩周りの筋肉を鍛えることも大切です。

寝具の調整も予防に繋がります。高すぎる枕はストレートネックになりやすいと言われています。自分に合った枕やマットレスを選び、快適な睡眠環境を整えましょう。

まとめ

スマホ首(ストレートネック)になってしまっている方はとても多いです。肩こり、首こり、頭痛などに悩まされていませんか?

姿勢の見直しや、ストレッチ、運動で、ストレートネックの予防と改善を図りましょう。

放置すると慢性的な痛みや、ふらつきなどを引き起こす可能性があります。早期の対処が重要です。もし症状がある場合は、整形外科や脳神経外科などの専門医に相談することをお勧めします。

参考

日本整形外科学会:https://www.joa.or.jp/