この記事の著者

【氏名】伊藤たえ(脳神経外科医)
【経歴】
2004年3月 浜松医科大学医学部卒業
2004年4月 浜松医科大学付属病院初期研修
2006年4月 浜松医科大学脳神経外科入局
2013年7月 河北総合病院 脳神経外科 勤務
2016年9月 山田記念病院 脳神経外科 勤務
2019年4月 菅原脳神経外科クリニック 勤務
2019年10月 医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科
菅原クリニック東京脳ドック 院長
【専門】
日本脳神経外科専門医 日本脳卒中学会専門医
【資格・免許】
医師免許
お正月が終わるころ、なんとなく胃が重い、身体がむくむ、疲れが取れないなど、様々な不調を感じることがありませんか?
そのタイミングで訪れるのが「七草粥(ななくさがゆ)」の日。
1月7日の朝に春の七草を加えたお粥をいただく、古くからの日本の習慣です。
「伝統行事のひとつ」と思われがちですが、医師の目線で見ても七草粥は健康的メリットが非常に多いです。
ただの風習以上に意味を持ち、身体と心の健康をサポートする素晴らしい知恵が詰まっています。
今回は、その七草粥について医学的な視点も交えて、お話させていただきます。
七草粥の由来と歴史
七草粥は、昔からの風習ですが、あまりご存じない方もいらっしゃると思うので、まずは由来と歴史について説明します。
七草粥は、毎年1月7日に食べる伝統的な料理です。平安時代から続いているとされ、全国に広がりました。
名前の通り、「七草」と呼ばれる野草を使ったおかゆで、新年の無病息災を祈る行事の一つです。
「七草」は一般的に「春の七草」を指し、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロの7種類の野草をしめします。
- セリ: 食物繊維やカルシウムが豊富で、胃の調子を整える効果が期待されます。
- ナズナ: 薬草としても使われ、解毒作用や利尿作用があるとされ、高血圧や動脈硬化予防に期待されています。
- ゴギョウ: 喉の痛みや咳を和らげると言われています。
- ハコベラ: ビタミンが豊富で、腹痛の緩和に効果が期待できます。
- ホトケノザ: 食物繊維が豊富で、整腸効果が期待されます。
- スズナ(かぶ): 消化を助けるジアスターゼが豊富です。
- スズシロ(大根): 消化不良や二日酔いに効果があるとされています。

これらの野草は、昔から自然の恵みとして重宝されてきました。
冬の寒さの中でも育つことができ、栄養価が高く、体を温め、免疫力を高める効果が期待できます。
七草粥の作り方と伝統的な意味
七草粥の作り方は、とてもシンプルです。
おコメと七草を用意し、ご飯を炊き、その中に刻んだ七草を加えて、さっと煮るだけです。

最近はスーパーで七草がセットになって売られていることも多いです。
味付けは塩だけの素朴な味わいが特徴です。これによって、野草の風味と栄養をダイレクトに感じることができます。
七草粥の効果
1. 胃腸の負担をリセット
年末年始は、暴飲暴食がどうしても増えます。アルコール、糖質の多い食事、脂質過多の料理など。
そのために、消化に必要な酵素や腸の蠕動運動がフル稼働しています。
七草粥は、消化が良く、水分量が多く、脂質がほぼゼロという胃腸に優しい食事の代表とも言えます。
特に、温かいお粥は胃の血流を改善し、消化活動を助け、休ませる役割を果たします。
朝にとることで自律神経を整え、内臓のリズムを整える効果も期待できます。

2. 七草はビタミン・ミネラルのミニサプリ
春の七草は、いずれも緑の野草で、現代の食生活に不足しがちな栄養素をしっかり補ってくれます。
特に多いのは、
- ビタミンA・C:粘膜や肌のバリア力アップ
- カルシウム・カリウム:むくみ・血圧調整
- 食物繊維:腸内環境サポート

冬場は風邪やインフルエンザが流行しやすい季節です。
七草に含まれるビタミンやミネラルは、免疫力をサポートし、感染症に対する抵抗力を高める助けになります。
また、ビタミンやミネラルの補強だけでなく、抗酸化作用やデトックス効果も期待できます。
3. 低カロリーで血糖値が安定
七草粥は食物繊維を含む植物と水分量の多い米がベースです。
そのため、血糖値の急上昇を抑えることができ、満腹感も長く続きます。
カロリーがとても低いというメリットもあります。
健康志向の高い方や、体重管理をしている方にとっては、とても理想的だと思われます。

七草粥の意味
医師として感じるのは、七草粥が「ただの行事食」以上の意味を持つことです。
1月は生活リズムが乱れがちで、睡眠・腸内環境・自律神経のバランスが崩れやすい時期です。
そんな中で、七草粥を食べるという行為は、健康習慣づくりのスイッチになります。
自分の身体の状態に意識を向ける機会にもなり、この心理的な効果も、ヘルスケアにとても重要です。
七草粥の習慣は、忙しい現代人にこそ取り入れてほしい健康への入り口といえます。
食べる量は控えめでもかまいません。
大切なのは、 「今日からまた丁寧に身体を扱おう」 という気持ちでいただくことです。
また、七草粥はこどもから高齢者まで、誰でも楽しめる料理です。
家族で一緒に作ることで、食育やコミュニケーションの機会にもなります。
