この記事の著者

【氏名】伊藤たえ(脳神経外科医)
【経歴】
2004年3月 浜松医科大学医学部卒業
2004年4月 浜松医科大学付属病院初期研修
2006年4月 浜松医科大学脳神経外科入局
2013年7月 河北総合病院 脳神経外科 勤務
2016年9月 山田記念病院 脳神経外科 勤務
2019年4月 菅原脳神経外科クリニック 勤務
2019年10月 医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科
菅原クリニック東京脳ドック 院長
【専門】
日本脳神経外科専門医 日本脳卒中学会専門医
【資格・免許】
医師免許
今は、スマートフォンや腕時計あるいは指輪型の機器で、毎日の健康状態を簡単に記録できる便利な時代になっています。
体重、血圧、歩数、心拍数、睡眠時間などのデータをアプリに入れるだけで、自分の体を「見える化」できるのです。
さらに、記録はただのメモではなく、将来の病気を防ぐ強力な方法にもなりえます。
今回は、自分の健康データを管理し、活用する大切さについてお話していきます。
健康を「見える化」するメリット
体の変化は、日常の中で気づきにくいものです。
たとえば血圧が少し上がっても、症状がなければ異常に気付くことはできません。
そこで役立つのがアプリです。
日々の数字をグラフにすると、小さな変化もはっきりわかります。

実際に、アプリで血圧や体重をつけていた患者さんが、早めに異常に気づいて生活を改善し、大きな病気を防げた例もあります。
数値の変化が見えることで、「まだ大丈夫」という油断を防ぎ、行動に移しやすくなるのです。
食事管理アプリでは、カロリーだけでなく、栄養バランスを分析してくれる機能があります。
これにより、「糖質だけ摂りすぎていた」「野菜の摂取量が足りなかった」といった気づきを得られます。
その気づきが、食生活を変える原動力になるのです。
医師の立場から言えば、このように日常の生活習慣を具体的に数値として捉えることは、生活習慣病予防の第一歩になります。
生活習慣の改善につながる
健康アプリは、単に数字を記録するだけではありません。
日常生活の習慣を見直すヒントも与えてくれます。
たとえば、歩数や運動の目標を設定すると、自然と体を動かす習慣がつきます。
睡眠アプリを使えば、寝る前のスマホやカフェインが睡眠に悪い影響を与えていることに気づけます。

先ほども述べましたが、食事管理アプリでは栄養バランスも見られます。
「糖質が多すぎた」「タンパク質が足りなかった」「野菜が足りなかった」などが分かり、食生活の改善に役立ちます。
数値で生活を見直すことはとても大切で、病気予防に大きく貢献します。
医療との連携がしやすい
アプリに記録したデータは、病院での診察にも役立ちます。
診察の際に、「最近の血圧の変化」や「体重の推移」を正確に示せることで、医師はより的確な判断が可能になります。

特に高血圧や糖尿病では、経過を長く追えることが治療方針を決める助けになります。
最近はデータを病院に送れる仕組みも増えています。
診察前に医師が状態を把握できれば、余分な検査や通院の負担を減らすことも可能です。
未来のリスクを予測できる
記録されたデータは、未来の健康リスクの予測にも役立ちます。
体重や血圧、運動量の変化を長期的に見ることで、生活習慣病のリスクを早めに察知できます。
これは医師だけでなく、自分自身が行動を変えるきっかけになります。
さらに最近のアプリはAIを使い、データを分析して個人に合った生活習慣を提案してくれます。
予防医療にとって、とても有効な技術です。

記録を続けるコツ
せっかくアプリで記録を始めても、三日坊主になってしまうことは少なくありません。
継続するためには、まず「目的を明確にする」ことが重要です。
健康診断を改善したいのか、疲れやストレスを管理したいのか。目的を意識すれば習慣化しやすくなります。

また、最初から全部を入力しなくても大丈夫です。
歩数、体重、血圧など、基本的なものだけで十分です。アプリによっては自動で記録できる機能もあるので、無理なく続けられます。
まとめ
健康アプリは、便利なだけでなく未来の自分を守る力になります。
日々の小さな変化を見逃さず、生活を見直すきっかけになるからです。
データをため、活用することで、病気の早期発見や生活習慣の改善につながります。
その結果として、長く元気に過ごせる自分をつくれるのです。
