この記事の著者

【氏名】伊藤たえ(脳神経外科医)

【経歴】
2004年3月 浜松医科大学医学部卒業
2004年4月 浜松医科大学付属病院初期研修
2006年4月 浜松医科大学脳神経外科入局
2013年7月 河北総合病院 脳神経外科 勤務
2016年9月 山田記念病院 脳神経外科 勤務
2019年4月 菅原脳神経外科クリニック 勤務
2019年10月 医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科
菅原クリニック東京脳ドック 院長

【専門】
日本脳神経外科専門医  日本脳卒中学会専門医

【資格・免許】
医師免許

毎朝、外出前に髪の毛をセットする際に、抜け毛やパサつきが気になったことはありませんか。

髪の毛は、見た目の印象を大きく左右するだけでなく、健康状態の指標のひとつとしても注目されています。

抜け毛や薄毛、髪のパサつきや切れ毛は、多くの場合、加齢や遺伝だけでなく、生活習慣や栄養状態、ストレスなどの影響を受けます。

今回は、美しい髪の毛をキープするために役に立つお話をしたいと思います。

髪の毛の成長について

まずは、髪の毛の成長について説明します。

髪の毛には「ヘアサイクル(毛周期)」と呼ばれる成長サイクルがあり、以下の3つの段階から成り立っています。

成長期(2~6年):髪が活発に成長する時期です。毛母細胞が、細胞分裂を促すことで髪が太く長く伸びていきます。

退行期(2週間):髪の成長が止まり、毛根が縮小する時期です。

休止期(3~4ヵ月):髪の成長が完全に止まり、やがて自然に抜け落ちるのを待つ時期です。

このサイクルが正常に機能することで、抜け落ちた髪の代わりに新しい髪が生え、健やかな髪が維持されます。

しかし、何らかの原因でこのサイクルが乱れると、髪が十分に成長する前に抜けてしまったり、細く弱い髪しか生えなくなったりして、薄毛や抜け毛につながります。

栄養バランスの重要性

髪の主成分はタンパク質であり、その多くはケラチンという硬いタンパク質です。

髪の成長に必要な栄養素としては、タンパク質のほかに、亜鉛、鉄、ビタミンA・C・E、ビタミンB群(特にビオチンやB12)、オメガ3脂肪酸などが挙げられます。

例えば、亜鉛は毛母細胞の分裂を助け、髪の成長を促進する働きがあります。

鉄不足は、血液中の酸素運搬が不十分になり、髪に必要な酸素や栄養素が届きにくくなるため、抜け毛や細毛の原因となります。

ビタミンB群やビオチンは、髪の代謝や健康な発毛に関与しています。

髪の毛の健康におすすめの食材

栄養素別に、髪の毛の健康にいい食材をあげていきます。

タンパク質:鶏胸肉、卵、魚(サバ、サーモン)、大豆製品

亜鉛:牡蠣、牛肉、ナッツ類

鉄分:赤身肉、ほうれん草、ひじき

ビタミンB群:レバー、納豆、全粒穀物

オメガ3脂肪酸:サーモン、アマニ油、くるみ

十分な睡眠とホルモンバランス

髪の成長には十分な睡眠と、適切なホルモンバランスも重要です。

成長ホルモンは、髪のヘアサイクルを正常に保つために、非常に重要な役割を担っています。

髪の主成分であるタンパク質の合成を促進する働きを成長ホルモンが担っているのです。

成長ホルモンは、特に睡眠中に多く分泌されます。そのため、睡眠不足になると成長ホルモンの分泌は減少します。

そうなると、髪の成長に必要なタンパク質の合成が滞り、ヘアサイクルが乱れる原因となってしまうのです。

成長ホルモン以外にも、様々なホルモンが髪の成長に影響を与えます。

男性ホルモンは、男性型脱毛症(AGA)の主な原因です。

男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)は、成長期を短くしてヘアサイクルを乱し、薄毛を進行させる原因となります。

女性ホルモンは、髪の成長期を長く保つ働きがあります。

そのため、更年期などで女性ホルモンの分泌が減少すると、ヘアサイクルが乱れやすくなり、抜け毛や薄毛の原因となります。

ストレス管理も重要

慢性的なストレスは、髪の健康に大きな影響を与えます。

強いストレスは自律神経を乱し、血流低下やホルモン分泌異常を引き起こすことで、抜け毛を増やす要因となります。

すぐに取り入れられるストレス緩和法を以下にあげておきます。

  • 軽い運動(ウォーキング、ジョギング)
  • 深呼吸や瞑想、ヨガ
  • 趣味の時間を持つ
  • 十分な休養と余暇

頭皮環境のケア

もちろん、頭皮環境のケアも重要です。

健康な髪を育てるためには、毛根が存在する頭皮の環境を整えることも欠かせません。

過剰な皮脂や汚れは毛穴の詰まりを引き起こし、細菌感染や炎症につながることがあります。

以下が頭皮ケアのポイントです。

  • 熱すぎないお湯で洗髪
  • 指の腹で優しくマッサージしながら洗う
  • 頭皮に合ったシャンプー(保湿成分や頭皮ケア成分入り)を使用
  • 過度なブラッシングや強い化学処理は避ける

避けるべき習慣

髪の健康を損なう生活習慣には、以下のようなものがあります。

  • 過度なダイエットによる栄養不足
  • 喫煙(毛根への血流低下、抜け毛の増加)
  • 過剰なアルコール摂取
  • 強い化学処理(カラーリング、パーマ)
  • 長時間の紫外線暴露(帽子やUVケアで対策)

まとめ

髪の健康は全身の健康と密接に関連しています。

栄養バランスの整った食事、十分な睡眠、ストレス管理、頭皮ケアを日常生活に取り入れることが、若々しく豊かな髪を保つポイントです。

髪の健康を守ることは、外見の美しさだけでなく、体全体の健康維持にもつながります。

日々の小さな選択を積み重ねることで、抜け毛やダメージのリスクを減らし、長く健康的な髪を育てることができます。

今日から実践できる食事、運動、睡眠、頭皮ケアを意識して、美しい髪を守っていきましょう。