この記事の著者

【氏名】青山愛果(管理栄養士)

【経歴】
2013年~2022年 病院管理栄養士として勤務
2024年 管理栄養士としてフリーランスとして活動

【資格・免許】
2011年3月 栄養士免許 取得
2013年5月 管理栄養士免許 取得

年を重ねるごとに健康の大切さを実感している方も多いのではないでしょうか?

高齢になっても元気に自立した生活を送りたいものです。

今回は、健康な高齢期を過ごすための食事のポイントを紹介します。

※持病があり、かかりつけ医から食事の指導を受けている方は、医師からの指導に従ってください。

食欲低下の放置は危険!

働き盛りの頃は、メタボリックシンドローム予防を重視して、食べ過ぎに気を付けていた方が多いのではないでしょうか?

高齢期に入っても生活習慣病予防は大切ですが、それよりも痩せすぎの方が問題になります。

長生きする人が増えた現代では、高齢者の「フレイル」対策が重要です。

フレイルとは、健康で自立した状態と要介護状態の間のことです。

高齢になるにつれて、少しの体調不良やケガをきっかけに大きく体力が低下することがあります。

一方で、食事や運動、社会参加などのフレイル予防に取り組むことで、健康な状態に戻ることも可能です。

体をつくる元となる食事は、フレイル対策においても重要です。

年を重ねるごとに食べる量が少なくなってきたという方は、必要な栄養が摂れていない可能性があります。

小食になりはじめた段階で、ご自身の食事を見直してみるのはいかがでしょうか?

フレイルを防ぐ食事のポイント

65歳以上で以下に1つでも当てはまる方は、これから紹介する「フレイル予防の食事」を取り入れることをおすすめします。

  • 低体重である(65歳以上でBMI 21.5未満)
  • ダイエットをしていないのに体重が落ちてきた
  • 食欲が落ちてきた
  • 小食である

注意したいポイントは「痩せ」「意図しない体重減少」です。

これらは、元気に体を動かすために必要な筋肉が落ちていく原因になります。

健康的な食事の基本は、主食、主菜、副菜を揃えることですが、毎日となると難しいですよね。

特に、一人暮らしの方は「自分のためだけに食事の手間をかけるのは面倒」と感じることもあるかもしれません。

また、年を重ねることで、硬い食べ物が苦手になったり、食事量が少なくなったりする方もいらっしゃるかと思います。

これらの課題を解決しながら必要な栄養を摂るコツが、下記の「フレイル予防の食事」です。

< フレイル予防の食事 >

  1. 野菜よりも主食と主菜を優先する
  2. 少量で栄養を補える食材を活用する
  3. やわらかさを重視した食べやすいメニューを取り入れる

それぞれのポイントや具体的な調理方法を紹介します。

1. 野菜よりも主食と主菜を優先する

高齢期に入るまでは、野菜を積極的に取り入れ、生活習慣病を予防することが重視されていました。

しかし、高齢でフレイルリスクの高い方が野菜を優先して食べると、それだけで満腹になってしまいます。

必要なエネルギーとたんぱく質を補うために、ご飯や麺などの主食と、肉、魚、卵、大豆製品を使用した主菜を優先的にとりましょう。

卵かけご飯や納豆ご飯、月見うどんなどの1品で主食と主菜がとれるメニューが手軽でおすすめです。

2. 少量で栄養を補える食材を活用する

太り過ぎが気になっていた頃に避けていた高カロリーな食事が、高齢期のフレイル予防に役立ちます。

少し食べただけでエネルギーを十分に補える食品は、痩せすぎが気になる方の味方です。

揚げ物や脂身の多い肉は重たく感じるという方は、料理の仕上げに油やマヨネーズをプラスする方法をお試しください。

オリーブオイルやごま油は、料理を香り良く仕上げて食欲をアップする効果も期待できます。

また、効率良くエネルギー補給したい方におすすめの油は、MCTオイルです。

MCTオイルに含まれる「中鎖脂肪酸」は、他の油よりも消化吸収が速く、スムーズにエネルギーへ変換されます。

MCTオイルは、無味無臭であるため、料理の風味を変えたくない方にもぴったり。

中鎖脂肪酸は加熱調理に適していないため、料理の仕上げにかけてお召し上がりください。

3. やわらかさを重視した食べやすいメニューを取り入れる

歯が弱くなり、肉や野菜の繊維が嚙み切れない方におすすめの方法を紹介します。

たんぱく質を補給するコツは、やわらかく仕上がる食品や調理法を選ぶことです。

食べやすい肉料理は、肉団子、ハンバーグ、そぼろあん、キーマカレーなどのひき肉を使ったものです。

肉団子やハンバーグには卵や豆腐を入れることで、やわらかく仕上がり、たんぱく質もプラスできます。

そぼろが喉にひっかかりやすい方は、あんかけやカレーなどのとろみをつけた調理法にすると、喉の通りが良くなりますよ。

煮魚、マグロのたたき、納豆、豆腐などのやわらかい魚料理や大豆製品も併せて取り入れましょう。

また、1回の食事量が少ない方は、ギリシャヨーグルトやたんぱく質を強化した乳飲料を間食で召し上がることもおすすめです。

食物繊維やビタミンの多い野菜を食べやすくする方法は、ミキサーにかけることです。

繊維が気になる青菜やきのこは、ミキサーでポタージュスープにすると、ちょうど良いとろみがつき、飲み込みやすくなります。

薄切りにした玉ねぎを炒めて甘さを引き出し、刻んだ野菜やきのこを加えて更に炒め、ひたひたの水を加えて煮込みます。

それに牛乳か豆乳を加えてミキサーにかけ、コンソメと塩コショウで味付けしたら完成です。

えのきやじゃがいもを入れると、自然なとろみがついて飲み込みやすくなりますよ。

まとめ

食が細くなったり、体重が落ちてきた高齢者にとって、フレイル対策は重要です。

十分なエネルギーとたんぱく質を補給して、筋肉を落とさないようにしましょう。

おいしく栄養を補い、はつらつとした高齢期をお過ごしください。

参考資料

厚生労働省 健康長寿に向けて必要な取り組みとは?100歳まで元気、そのカギを握るのはフレイル予防だ
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202111_00001.html

厚生労働省 食べて元気にフレイル予防
https://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1588289781176/simple/tabetegennkinihureiruyobou.pdf