この記事の著者

【氏名】青山愛果(管理栄養士)

【経歴】
2013年~2022年 病院管理栄養士として勤務
2024年 管理栄養士としてフリーランスとして活動

【資格・免許】
2011年3月 栄養士免許 取得
2013年5月 管理栄養士免許 取得

災害への備えとして、水やカンパンなどの長期保存食が定番ですね。

しかし、それだけでは栄養面に不安があります。

今回は災害時も必要な栄養が摂れる備蓄の方法を紹介します。

災害に備えてローリングストックをしよう

皆さんは災害対策として、どのような食品を備蓄していますか?

地震などの災害に備え、普段から保存の効く食品を1週間分ほど備えることが理想です。

避難所でも支援物資は配られますが、おにぎり、パン、カップ麺などの主食が中心で、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維が不足しやすい状況です。

家庭での備蓄食品は、水を入れるだけで出来上がるアルファ米や長期保存用のパンが基本ですが、それだけでは栄養バランスが偏ってしまいます。

災害対策用の長期保存食品に加え、普段から食べ慣れている食品を揃えることがおすすめです。

普段から食べているものを多めにストックし、古いものから食べ、新しく買い足すことの繰り返しを「ローリングストック」と呼びます。

ローリングストックをすることで、災害時でも慣れ親しんだ味の食事をとることができますよ。

インフルエンザなどの感染症にかかって外出できない時など、日常生活の困った時にもローリングストックが役立ちます。

ローリングストックにおすすめの食品

災害時に栄養不足にならないための食品を、栄養素の視点から紹介します。

どの栄養素にも共通するおすすめの食品が、保存期間の長い「缶詰」です。

缶詰は保存性に優れているだけでなく、酸素に触れない構造になっており、栄養価が保たれている点が魅力です。

缶詰を選ぶ際は、缶切り無しで食べられるものが手軽で便利ですよ。

たんぱく質を補うためのローリングストック

たんぱく質補給には、魚介や肉の缶詰を備えましょう。

魚はたんぱく質以外にも、ビタミン、ミネラル、EPAなどのn-3系脂肪酸が補えます。

n-3系脂肪酸は日常でも不足しやすく、普段から取り入れたい栄養素なので、ローリングストックにぴったり。

缶詰の魚は、サバ、ツナ、イワシ、サンマ、サケが一般的です。

サバの味噌煮やサンマのかば焼きは、災害時でも調理や味付けをせず、そのまま食べられます。

あさりの缶詰は、鉄分が豊富で貧血になりがちな女性におすすめです。

ホタテやカニの缶詰は普段の料理にも使いやすく、旨みがたっぷりですよ。

肉の缶詰には、ささみ、やきとり、コンビーフ、ランチョンミートなどがあります。

これらは、ご飯や麺に乗せたり、パンに挟んだり、どんな主食にも合うことが魅力です。

他のたんぱく質源として、大豆の缶詰や豆乳、常温で長期保存できる豆腐や牛乳も便利ですよ。

牛乳や豆乳は開封したらすぐ使い切らないといけないため、200mlの小さめサイズを備えると良いでしょう。

ビタミン・ミネラル・食物繊維を補うためのローリングストック

災害時には新鮮な野菜や果物は手に入りにくくなります。

そんな時に役立つのが、缶詰や乾物です。

災害時でも使いやすいものは、トマトソース、ミートソース、スープの缶詰です。

味付けされているため、そのままでもおいしく食べられ、パスタやパンにかけても食べられる手軽さが魅力です。

日常的に取り入れるなら、カットトマト、コーン、ひじき、マッシュルーム、ミックスビーンズなどの缶詰も役立ちますよ。

また、カットワカメ、海苔、あおさなども手軽に食物繊維やミネラルが補給できます。

味噌汁やご飯にも合わせやすく、栄養面でも優れているため、普段から取り入れたい食材です。

他にも、桃、ミカン、パイナップルなどのフルーツ缶を備えておくと良いでしょう。

災害時でもフレッシュな甘酸っぱさを楽しむことができる上に、ビタミン補給にもなり重宝します。

更に手軽さを求めるなら、野菜ジュース、トマトジュース、青汁があると心強いでしょう。

生活習慣病予防のためには、糖類や食塩の入っていないものを選ぶと安心です。

備えておくと役立つもの

上記以外にも、以下のグッズを揃えておくと便利です。

  • カセットコンロ
  • カセットガスボンベ
  • 耐熱性ポリ袋
  • ラップ
  • アルミホイル
  • 使い捨てカトラリー(箸、スプーン、フォーク、ナイフ)
  • 除菌ウェットシート

加熱しなくても食べられる食品もありますが、被災中も温かいものを食べられると安心します。

カセットコンロ、カセットガスボンベ、耐熱性ポリ袋があると加熱調理ができ、温かい料理を用意できますよ。

また、被災中は水の使用量が限られます。

洗い物を最小限にするために役立つものが、ラップ、アルミホイル、使い捨てカトラリーです。

ラップは食器につけて汚れを防いだり、ご飯をおにぎりにしたり、多様な場面で使えます。

除菌用ウェットシートは、手洗いや食器の水洗いが出来ない場面で、衛生を保つことができる安心アイテムです。

ローリングストックにおすすめしないもの

災害時の備えとしておすすめしないものは、インスタント麺です。

その理由は、以下の2つです。

  • ローリングストックすることで、日常の栄養バランスが崩れやすくなるため
  • 災害時にスープを残すとゴミが出て、スープを飲むと食塩や脂質の摂り過ぎになるため

インスタント麺の賞味期限は1年以内であるものがほとんどであり、賞味期限前にストックを入れ替えようとすると、定期的に消費しなければいけません。

インスタント麺を食べる機会が増えることで、食塩や脂質の摂り過ぎになります。

また、災害時はゴミが溜まりやすくなるため、麺のスープを飲み干したくない方には備蓄に向きません。

インスタント麺をストックしておきたい場合は、最小限の量にとどめておきましましょう。

まとめ

災害時に備えて、普段から使う食品をローリングストックしておきましょう。

ご飯やパンなどの主食だけではなく、不足した栄養を補うための食品を意識的に揃えておくと役立ちます。

特に、肉、魚、野菜、果物の缶詰や乾燥した海藻、野菜ジュースを備えておくと、被災中の栄養バランスも整えやすくなりますよ。

参考資料

農林水産省 緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/pdf/140205-02.pdf

公益社団法人 千葉県栄養士会 災害時に備えた食料
https://www.eiyou-chiba.or.jp/wp-content/uploads/2024/03/15d94916fa3c3088e4f87684e70159b6.pdf