この記事の著者

【氏名】青山愛果(管理栄養士)

【経歴】
2013年~2022年 病院管理栄養士として勤務
2024年 管理栄養士としてフリーランスとして活動

【資格・免許】
2011年3月 栄養士免許 取得
2013年5月 管理栄養士免許 取得

「高血圧に塩辛いものは良くない」というイメージが定着しているかと思いますが、一体どの程度の味付けに抑えれば良いのでしょうか?

料理に含まれる塩の量は目に見えないため、どのくらい摂ったのか分かりにくいところが難点です。

減塩の基礎知識に加え、「減塩するとおいしくない」と感じている方に向けて、負担なく減塩につながる方法も紹介します。

高血圧に減塩が重要な理由

体を流れる血液では、塩の主成分であるナトリウムの濃度を調整しています。

塩辛いものを食べた時に、喉が渇いて水を飲みたくなったことはありませんか?

塩を多く摂ると血液のナトリウム濃度が高くなり、それを薄めようとして血液の水分量を増やして濃度を調整しようとするのです。

そうすると、血液の量が増えて血管を圧迫して血圧が上がります。

これが食塩を摂りすぎると血圧が高くなる理由です。

高血圧が続くと、血管はしなやかさを失って硬くなり、動脈硬化へとつながります。

脳梗塞や心臓病を防ぐためにも、高血圧を改善することは大切です。

健康な日々を過ごすために減塩に取り組むことをおすすめします。

1日に摂る食塩の目標量

健康な人の場合、1日に摂る食塩の目標量は男性7.5g未満、女性6.5g未満です。

高血圧や慢性腎臓病である方の場合、重症化予防のための食塩目標量は男女とも1日6.0g未満です。

この目標に対し、日本人はどのくらい食塩を摂っているのでしょうか?

令和4年の国民健康・栄養調査では、日本人の平均食塩摂取量は1日9.7gでした。

日本人は目標量より3gほど食塩を多く摂っていると考えられます。

適切な食塩量に抑えるため、普段とっている食事から3gの食塩を減らす方法を紹介します。

食塩の多い食品

食塩量が多いか少ないかを判断する際、1食に摂る食塩量の目安を考えると良いでしょう。

男性であれば目標量の7.5gを3食で割った2.5gが1食に摂る食塩量の目安です。

女性は同様に計算し、2.1gが目安となります。

次に、食品に含まれる食塩量を知りましょう。

普段何気なく食べているものに、意外と食塩が多く含まれていることがあります。

食塩を多く含む代表的な食品は、以下の6つです。

  1. 漬物や佃煮などのご飯の友
  2. 麺類
  3. 汁物
  4. パン
  5. チーズ
  6. ハムなどの加工食品

口に入れた時に塩辛さを感じないパンも、意外と食塩が多く含まれているためご注意ください。

上記の中から具体的な食品名とそれに含まれる食塩量を紹介します。

<食塩の多い食品と食塩含有量>

食品数量食塩量
しょうゆラーメン1杯約7g
味噌汁1杯約2g
キムチ小分けパック1個1.5g
スライスチーズ1枚0.6g
たくあん薄切り3枚0.4g
フランスパン3cmカット0.4g
ウインナー1本0.4g
ロースハム1枚0.3g

フランスパンとウインナーは、食塩量の多いイメージのある漬物(たくあん)と同等の食塩量を含んでいます。

商品によって食塩量は異なるため、パッケージの栄養成分表示をチェックしてみてください。

調味料の中では、塩・醤油・みそ・顆粒和風だし・豆板醤・柚子胡椒に食塩が多く含まれています。

小さじ1杯あたりの食塩量は下記のとおりです。

調味料食塩量
6g
柚子胡椒1.3g
顆粒和風だし1.2g
濃口醤油0.9g
豆板醤0.9g
淡色辛みそ0.7g

注意したいのが顆粒和風だしと柚子胡椒、豆板醤です。

どれも塩辛いイメージはありませんが、醤油と同等かそれ以上に食塩を含んでいます。

使いすぎにはご注意ください。

おいしく減塩につながる4つの工夫

調味料や食塩の多い食品を減らす方法だけでは、物足りなさを感じることもありますよね。

減塩はおいしく取り組めなければ、続けるのは難しくなってしまいます。

今回は、味の物足りなさをカバーしながら摂取食塩量を減らす方法を4つ紹介します。

  1. 汁ものは具沢山にする
  2. 調味料はかけずにつける
  3. 麺類のスープは残す、つけ汁は麺の半分だけつける
  4. 旨み、辛味、香りを効かせた味付けにする

それぞれの具体的な方法をチェックしてみましょう。

1.汁ものは具沢山にする

味噌汁などの汁ものには約2gの食塩量が含まれています。

調味料を減らして薄味にすることに抵抗がある方は、具沢山にすることがおすすめです。

同じサイズの器でも、具を増やすことで自然と汁の量が減って食塩量を抑えることができます。

野菜も多く摂れる一石二鳥の方法です。

2.調味料はかけずにつける

醤油やソースをかける時に、自分が思った以上にかけ過ぎてしまったことはありませんか?

調味料をかけると皿の底に溜まってしまい、料理に染みこんでしまいます。

調味料はあらかじめ小皿などに入れ、つけて食べることで摂りすぎを抑えられますよ。

3.麺類のスープは残す、つけ汁は麺の半分だけつける

ラーメンなどの温かい麺類は、汁まで完食すると1杯で1日分の食塩を摂ることになってしまいます。

汁を全部残すと、半分くらい食塩量を減らすことができますよ。

ざるそばなどの冷たい麺類は、つけ汁を麺の半分だけつけることで食塩量を半分に抑えられます。

つい汁を飲みたくなることもあるかもしれませんが、少量を味わう程度に留めましょう。

4.旨み、辛味、香りを効かせた味付けにする

ご自身で調理する方におすすめの方法が、塩味以外の味を加えて物足りなさをカバーする方法です。

かつお節やこんぶ、しいたけなどの旨みのある食材を取り入れたり、顆粒だしではなく食塩不使用のだしパックを使うと味噌などの調味料を減らしてもおいしくいただけます。

うま味は塩味と重ねると味を強く感じる効果があるため、最もおすすめの方法です。

また、カレー粉やトウガラシ、コショウなどの辛味や大葉、ネギ、みょうがなどの香りの強い食材を合わせた味付けにするのも良いでしょう。

注意したいのは、柚子胡椒や豆板醤、チューブのカラシやワサビなどのペースト状の辛味調味料には食塩が含まれていることです。

使いすぎにはご注意ください。

まとめ

減塩と聞くと「おいしくない」というイメージがあるかもしれませんが、ちょっとした工夫でおいしく減塩に取り組むことができます。

また、薄味も食べ続けるうちに慣れてくるため「ちょっと薄めかな?」と思う程度の味付けにすることもおすすめです。

無理のない範囲で減塩に取り組んでみてはいかがでしょうか?

参考資料

厚生労働省 令和4年 国民健康・栄養調査結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001296359.pdf

特定非営利活動法人 日本高血圧学会 さあ、減塩!
https://www.jpnsh.jp/general_salt.html